第1回 電気通信大学 坂本先生 編
「文系&理系」のかけ合わせで生み出す新しい価値で世界制覇!の巻
しっとり
さらさら
きらきら
ばっちり
最近の小学生は、
擬音語・擬態語のことを「オノマトペ」と習うのだそうです。
何だかポップで可愛らしい響き。そしてこの「オノマトペ」は数値化する研究もされているそうです。
ことばを数値化するとは、どんなことでしょう?
ことばと数字は仲良くできるのでしょうか。
クリエイティブ&サイエンスに通ずることがあるのでしょうか。
新米部員S子は
電気通信大学教授 坂本真樹先生のお話しを伺って来ました。
お会いした先生は、優しそうで女子力が高そうな予習どおりの印象です。
※予習アイテム=著書「愛されるひとがさらりと使っている! 女度を上げるオノマトペの法則」)
※先生は堅い学術書ばかりを書かれていたそうですが、この本で初めて柔らかいテーマで書かれたそうです。
まずは、
この“ポップで可愛らしい”響きの「オノマトペ」という言葉そのものを
数値化していただきました。先生が開発されたシステムを使います。
それがこちらです。
<結果 >
きれい :0.45 ⇔ きたない :0.0
滑らかな :0.56 ⇔ ざらざらした:0.0
明るい :0.31 ⇔ 暗い
:0.0
快い :0.53 ⇔ 不快な
:0.0
たしかに、
わたしのもっていた「オノマトペ」の音の印象はこんなふうでした。
みなさんは、「オノマトペ」のことばの響きにどんな印象を持たれますか?
面白い、軽快、おもちゃの名前みたい、カラフルなかんじ、、、
たくさんのことばが挙がりそうです。
ここから坂本先生へのインタビューです。
━iPadアプリも開発されているそうですね。
坂本先生: ことばを入力すると、このように数値が出るシステムを開発しました。
いろんな業種の企業さんに活用していただけるようになっています。
━どのようなフィールドで?
坂本先生: 広告コミュニケーションもだし、実際に製品開発の現場でも活用されます。
━具体的には、製品のネーミング、であったりでしょうか?
坂本先生: それもありますが、製品の材料づくりでも活用できます。
例えば「もっとしっとり」した物を作るには、油分をどうしたらいいのか、
何を変えればいいのか、といったふうに。
━ことばの音の印象を数値化するシステムを使って、成分の調整をする。驚きです。
坂本先生: 「しっとり」というオノマトペは、非常に面白いです。
手触りでいえば、化粧品の使用感をしっとりと表したり、
見た目でいえば、しっとりとした雰囲気の女性、といった使い方もあります。
無意識に使いますが「しっとり」ってつまりどういうことかを
ちゃんと説明できる方は、あまりいないかも知れません。
でもシステムにかけると、「しっとりはこうです」と 説明出来ます。
たとえば、お客さんが『こういうことが欲しい』と オノマトペで言ってくるとします。
━そういう場面はよくあります。
坂本先生: つまりどういうことを求めているのか、何となくは分かるけど、分からないようなとき。
人によって微妙に違うかも知れないことを、共有化するシステムとしても使えます。
━先生は、タレントの広告起用のマッチングも研究されてました。
坂本先生: オノマトペの研究との共通点は「脳の中の処理のマッピング」です。
タレントに関する知識とブランドイメージが相互作用する場が、広告コミュニケーションの場。
オノマトペも、人の五感の相互作用です。
音の印象が触覚的な印象とマッピングするとか、視覚的な印象とマッピングするとかいう
現象です。
人は、しょっちゅう頭の中でいろんなものを
組合わせて、掛け合わせる。
無意識にやってます。
そこが元々面白いと思っているところです。
━面白いと思うだけでなく、システム開発まで実現される、情熱がすごいです。
坂本先生: 学生さんからは、ギラギラしていると言われます。
ギトギトじゃないから、まあいいか、と思いますけど(笑)
最近の学生さんはおっとり、さっぱりしている人が多いですが、
もっとギラギラとして強さを持ってもいいんじゃないかなと思います。
情熱がないと人生つまらないですしね。
━ギラギラは褒め言葉ですね。先生はエネルギッシュで楽しそうに見えます。
━ことばを数字にする研究領域は以前からあるのですか?
坂本先生: 1950年代から、心理学のオズグットが言葉を数量化することに関心を持っていました。
その方は「明るい/暗い」などの形容詞を対にして
7段階で人に評定してもらうことで抽象的な言葉の意味を数量化する方法を提案しました。
今でも広告代理店や商品開発の現場で使っているようなアンケート法。
あれはまさに、ことばを数値化しようとすることの走りです。
━ことばは心理学の領域でもある。
坂本先生: ことばの研究は言語学や心理学など、文系の研究者が中心にやってきました。
ことばは人が情報処理した結果発することなので、
それを把握しようとするとサイエンスになってきます。
脳科学だとファンクショナルMRIを使って脳を測ること等もありますが、
ことばもそれを知るための手がかりです。
でもことばは曖昧で、そのままでは数字になりません。
━文系の坂本先生が、理系の技術を用いて研究しようとしたのは、なぜですか?
坂本先生: わたしの「言語学の知見」と「理系の技術」とを合体させたら
新しいことが出来るんじゃないかと考えました。
━かけ合わせですか。
坂本先生: 御社でも「クリエイティブ&サイエンス」として新しいものを生み出そうとされていますが、
わたしも誰にも生み出せない新しい価値をつくっていこうと考えたのです。
━いつからこの研究をなさっているのですか?
坂本先生: 2000年に電通大に着任してからです。
━きっかけは何ですか?
坂本先生: きっかけのひとつは、学生さんにオノマトペを卒論テーマにしたいという人がいて、
試しに始めてみたことです。
オノマトペはマンガに使われることが多く、マンガのクリエーターさんの支援が
やりたいという、その学生さんの目的もありました。
その目的は私の研究のゴールではありませんでしたが、
オノマトペは人の感性にアプローチするのに面白いので
一緒にやってみようと思いました。
学生さんにプログラムを書くのが得意な人がいると
こんなデータがあるから組んでみよう、といったかんじで。
━10年以上研究を続けてらっしゃる。
坂本先生: 最初は、音の印象を数値化することから。そこからだんだん五感へ。
オノマトペは日常に根差し、人の感性全部に使われているので
オノマトペが使われる領域すべてを制覇しようと思っています。
日本だけでなく音が喚起するイメージには普遍性があると思っています。
海外でも講演したり国際ジャーナルへ論文を書いたり外資系企業と
ご一緒したりすることもあります。
オノマトペで世界制覇します(笑)
━最後に、TVCがクリエイティブ&サイエンスを探求するために何かエールをいただけますか?
オノマトペでお願いします。
坂本先生: 「ギラギラ」しながら「ポシポシ」がんばる。
━その心は!?
坂本先生: ギラギラとした情熱は必要だけど、それだけだと周りも疲れてしまいます。
だからちょっとした抜け感も必要。
でも仕事はふわふわと抜けてはいけませんので、
ポシっというくらいの弾け感があるのがいいと思います。
━ありがとうございます!
<インタビューの感想>
なにかと何かを掛け合わせて、新しい価値を生み出します、とおっしゃる先生は
可愛い顔して、エネルギッシュです!
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